Ecosia
これまで無意識に行なってきたこと。これから無意識に行なっていくこと。

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2024.09.11

注: この記事は 2023年8月に執筆されたもので、Ecosia の現状と異なる記述があります。

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生活の中にある『無意識』を発見しよう

普段使っている検索サービスはなんですか?という質問に対して多くの人が Google、Yahoo!、Bing と答えるだろう。statcounter によると、日本国内の検索サービスの使用率はこの3つの検索サービスだけで実に98.95%を占めている。インターネット黎明期を現在主流のロボット型とは異なるディレクトリ型検索サービスという形で支えてきた Yahoo! の根強い人気はさておき、Google と Bing の使用率が高いのはおそらくブラウザにプリセットされている検索サービスで、無意識に使っているという人がほとんどなのではないだろうか。

自分の生活の中にサステナビリティを組み込もうと思ってもなかなかうまくいくものではない。環境に配慮した製品やサービスを探すのはなかなか難しく、運よく見つけたとしても大抵は普段使っているものよりも割高だったりするし、求めている機能を諦めなくてはいけない場合もある。そんな中で意識的に頑張って変化させようとしても、いずれどこかに無理が出てきて嫌になって辞めてしまったりする。であれば、これまで無意識に行なっていたことに変化を加えてみるのはどうだろう。

Ecosia はそんな無意識の変化を実現するのにぴったりのサービスだ。ブラウザのデフォルトの検索サービスをEcosia に変えるだけで、それ以降まったくの無意識下で自分の生活の一部に環境 保護活動を組み込むことができる。iOS ユーザーであれば幸いなことに何もアプリをインストールせずに “設定アプリ > Safari > 検索エンジンの一覧” から Ecosia を選択することができる。

鬱蒼と茂った木々が有機的で可愛らしい

まずは、https://www.ecosia.org/ にアクセスしてみよう。2009年にサービスをスタートした Ecosia は2022年に全面リニューアルした。メジャーどころの検索サービスとはちょっと違った雰囲気をまとったウェブサイトが表示される。デスクトップ版ではさらにカラフルで有機的な木々のイラストが追加されていて、少ない本数でも熱帯雨林のような雰囲気を出している。

性能面でもサービス開始当初の遅くて使い物にならない状況から目を見張る進化をとげ、現在は検索エンジンに Bing エンジンのカスタム版が採用されている。Bing エンジンは Google エンジンと比較した場合、機能を絞り込むことで速度を優先した検索エンジン。後発ながら検索結果もGoogleと互角の精度で、さらに Ecosia の場合、Google や Bing と比べると検索結果がシンプルなのでわかりやすい。

また、プライバシーの保護にも力を入れており、個人情報は1週間だけ保存され、その後匿名化/破棄される。さらに、他サービスでは使えるが Ecosia では使えないような機能、例えば地図検 索のような機能は、簡単に他サービスを閲覧できるようにリンクが用意されているので使い勝手が大きく損なわれることはない。検索精度、速度、プライバシーの保護と部分的にはメジャー検索サービスよりも優れた部分もあり、Ecosia は検索サービスとして最高の選択肢の一つと言える。

Ecosia の特徴的な機能は『Green features』と呼ばれている機能だ。これらは検索結果にヒットした企業や団体、国家がどのように環境に影響を及ぼしているのかを示すアイコン群で構成されており、『Green Leaf』は環境に配慮した団体であること、『Fossil Fuel Plant』は石炭の採 掘、輸送、販売等を行なっている団体であること、昨年追加された新しい機能である『Climate Pledge Rating』は企業が気候変動対策にどれくらい取り組んでいるかを評価するためのレーティングシステムで、A-F の6段階の評価が企業や団体のリンクの隣に表示される。

これらのアイコンは調査機関などを通して得られた結果をもとに付与されるものであり、お金買うことができないと明言されているため、一定の信頼をおけるものと考えることができる。

ただし Green features はごく限定的な言語環境内のごく一部の企業/団体にしか適用されておらず、実用性という意味ではまだまだ発展途上の機能だ。そもそも日本語ではまったく機能していない。これらの機能の適用範囲が拡大すれば、環境にとって有益な企業を検索結果の上位に持ってくるというようなことができるようになり、そうなればますます無意識下での環境配慮が実現 する。今後の発展に期待したい。

楽しく検索、楽して植林

Ecosia がリリースされてから最も話題になり、Ecosia を語る上で外せないのは『検索するだけで植林プロジェクトに参加できる』ということだ。検索画面の上部に木の下に数字が書かれたアイコンがある。2023年時点では約40回検索するとアイコンの数字が1加算される。画面の一部分に小さく表示された数字が変化するだけなのだが、増え続ける数値を眺めるのは RPG のレベルアップのようで楽しい。

使い続けていると、数字が増えていくのにもすっかり飽きて、この小さなアイコンのことは忘れてしまいがちだが、あるときふと目をやってみると、いつの間にか数値が3桁に達していたりする。自分が無意識に使っている検索で1年程度でちょっとした林が生まれるくらい植林したことになっていると思うと、またワクワクしてくる。Ecosia はそんなユーザーを 2000万人以上抱えおり、2000万人が『ちょっとした林』を作ることに貢献できたら何が起こるだろうか。

Ecosia はこれまでに1億7000万本以上植林してきた。1億7000万本と言われてもピンとこないかもしれないので日本人にとって馴染みのある明治神宮と比較してみよう。明治神宮の人口林には現在約4万本の樹木があるといわれている。これの4250倍だ。明治神宮の敷地は約70万平方メートルなので、面積にすると297万5000平方キロメートル。アマゾン熱帯雨林の約半分で、アルゼンチンの国土より広く、日本8個分に相当する。これほどのことを成し遂げた一部になれると考えると、Ecosia を使い続ける意味を見出すことができるかもしれない。

『使い続けられるサービス』に必要なものとは?

Ecosia は利益の80%を植林プロジェクトに割り当てていると公言しており、それを裏付けるために収益や支出についての情報がネットで公開されている。自分が検索した結果 Ecosia が得た広告収入が何に使われているのかを知ることができることでということは、Ecosia への信頼感の向上につながる。また収益の情報に加え Ecosia Blog では、Ecosia の活動や環境に関する話題が定期的に更新されており、具体的にどこにどのような目的で植林されたのか、などが記載されており Ecosia という企業/サービスに対する安心感を向上させている。

Ecosia が消費する電力に関しても、ブログで公開されている。世界中のサーバーをクロールし、その内容を解析し、同時にユーザーからのアクセスに瞬時に応える、検索エンジンのような巨大なシステムは24時間休むことなくエネルギーを消費し続ける。Ecosia は自社で消費する電力の200%を再生可能エネルギーで発電する能力を持っており、余剰電力は石炭、ガス、亜炭、原子力発電よりもはるかに安い料金で販売している。

信頼や安心はサービスを使い続ける上で重要な要素のひとつだ。特に検索エンジンのような、生活の一部のようになってしまうサービスにとっては最も重要な要素の一つと言える。

無意識の行動を置き換えてより良い社会を実現する

移動で使う車、飛行機、船、仕事で使うパソコン、スマートホン、筆記用具、日々の生活で使う冷蔵庫、洗濯機、掃除機、それらを動かすため、あるいは作るために使われる材料や燃料。現代のほとんどの国や地域で生きる人類はほぼ無意識にこれらの道具やテクノロジーを活用し、ほぼ無自覚に環境を破壊してきた。

これからは日々の生活の中で可能な限り『無意識の破壊』を『無意識の再生』に置き換えていくことが重要になってくる。Ecosia はその第一歩として最適なツールだ。